長岡市 選手育成クリニック REPORT

 11月3日(日)に長岡市においてバスケットボールクリニックを行いました。講師として、恩塚亨さん(東京医療保健大学女子バスケットボール部ヘッドコーチ/2024年パリオリンピック女子日本代表ヘッドコーチ)をお迎えしました。クリニックを通して得た、私たちの学びを共有いたします。恩塚さん、ステキな学びをありがとうございました。

目次

ANDの才能

「規律+主体性」= 理想のコーチング

選手に規律を求めすぎると、選手への押しつけ感が強まります。コーチが指示したことを従順にこなすことだけに慣れてしまうと、変化に順応しずらい選手になってしまいます。一方、選手に主体性を発揮させすぎると、コーチの放任になってしまい、チームスポーツとしての集団の力を発揮することができません。理想のコーチングとは、「規律」と「主体性」の二項対立ではなく、両軸が大切なのです。

 「規律+主体性」をイメージしやすいのは「引き出し」です。コーチは、合理的な戦術を用意する役割をもちます。これは、選手に対して「戦術の引き出しを用意」することであり、チームにとっての「規律」になります。「こういう段階で、こういう戦況の時はこうする!」といった戦況に応じた引き出し(戦術)を用意してあげることは、コーチの大切な役割です。ですが、「どの引き出しを引くか?」は、試合の中で選手自身が判断して選択します。これが選手の「主体性」になります。

 コーチの役割は、選手が試合で発揮する「戦術の引き出しを用意すること」(規律)であり、選手の役割は、試合の中で「いくつかの引き出しを選択して引くこと」(主体性)になります。

 理想のコーチングとは、コーチが設定した規律(選手も納得した規律)を、選手が状況に応じて主体的に選択させることです。

「選手を上手くする」で選手の主体性は育つのか?

 選手もコーチも、バスケットボールをしていて「イライラするなぁ」「楽しめていないなぁ」と感じることはありませんか?それは、選手が「上手くなっていないから」であり、コーチが「選手を上手くできていないから」なのかもしれません。選手は、自分が上手くなったら絶対楽しいですし、コーチは、選手が上達していくと絶対楽しいはずです。ここでこんな問いを考えてみました、

「コーチが選手を上手くしたら、選手の主体性は育つのか?」

 この問いに対する答えは、今の私では出ていません。これからの活動で追い求めていきたい問いです。1つ言えることは、コーチは選手を上手くするために「どのような手段を使うか?」がポイントになりそうだということです。先述した通り、「規律+主体性」のコーチングがヒントになりそうです。

ワクワクは最強

「どうしたら、目の前の選手はエネルギーを出して練習してくれるのか?」

 スポーツ指導に関わるコーチであれば、誰もが一度は考えたことがあるのではないでしょうか?私もそんな問いと向き合い続ける1人です。今回のクリニックでの私たちの学びを整理しました。

①理解・納得よりも達成感

 選手にシュートを教える時に、2つの視点があります。1つ目は、シュートの技術を教え、シュートの大切さを伝えます。この時に選手は、技術を「理解」し、大切さに「納得」します。2つ目は、シュートを決める達成感を与えることです。この時に選手は嬉しいと感じ、心の中で「ワクワク」します。選手の中で生まれる「理解・納得」と「ワクワク」では、選手の行動は大きく異なります。「ワクワク」すると、選手はいつもそのことで頭がいっぱいになります。そして、コーチに言われなくても勝手に練習をやり始めるでしょう。コーチの役割は、選手の心の状態を「ワクワク」させることです。そのために、選手が成果を出せるための上質なコーチングが求められるのです。

②動詞よりも名詞

 選手に声をかけるときの言葉の使い方はとても大切です。「丁寧な言葉を使おう!」「優しい口調で話そう!」とは少し違います。人は動詞よりも、名詞で訴えかけられたほうが行動率が11%上がるそうです。例えば、シュートが決まらない選手に「シュートを決めろよ!」と動詞で声をかけるよりも「レブロンになろう!」と名詞で声をかけたほうが成果につながりやすいということです。教員1年目、ある先輩から「子どもは、かける言葉で行動が変わっちゃうよ!」と教えてもらったことがあります。コーチが選手に「どんな言葉を使うか?」はとても大切なスキルであると再認識しました。

③コーチが選手にプレゼント

 コーチをしていて、よく選手からこんな相談を受けます。

「自分の課題は何ですか?」

 私もコーチ5年目になりますが、数えきれないほど相談をされました。聞いてくる選手の目は、少し自信なさそうな弱気な目をしています。この時、選手に「自分の強み」を聞いてみることがとても重要です。

「あなたの強みは何?」

 つまり「足りない自分」ではなく「自分の良さ」に気づかせることが大切です。たしかに、自分の足りない課題に向き合うことはとても大切です。ですが、自分の強みも出せていないのに、自分の課題と向き合うのはもったいないと思うのです。そもそも「足りない自分」はネガティブな見方です。選手に「自分の強み」に気づかせて、ポジティブな見方を身につけさせていくこともとても大切なコーチの役割です。

 目の前に、新札の1万円札があります。この1万円札をクシャクシャにして床に落としても、その1万円の価値は何も変わりません。コーチは、まず選手に「自分の価値」に気づかせることが大切なのです。

 

参加選手の声

・1on1を信号機の「赤・青・黄」で例えられていて、分かりやすかった。

・日々の練習など、細かいことをやることが大切だと思ったし、その学びを継続してできる人が上に上がっていくの 

 だと感じた。

・相手のトップフットを狙う練習がとても難しかった。これからチャレンジしていきたい。

・「ワクワクは最強だ!」をいくつもの話と結びつけていて、分かりやすい講演会だった。

・「規律+主体性」ができていると選手も先生も楽しめるのだと思った。

・恩塚さんから言われた「自分の感じたことを、言葉に書く」ということを継続したいと思った。

・当たり前のことを「無意識」でできる選手は強いと感じた。

・人は、動詞よりも名詞の言葉がけで動くことを知った。

・自分からコミュニケーションを取ることが大切だと思った。

・恩塚さんにたくさん質問できて、たくさんの学びを得ることができた。

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