臥薪嘗胆
私たちの目標は、「全国大会で勝つこと」でした。そのため、「富山県大会優勝」は最低ラインのミッションであり、必ず達成しなければいけないものとしてチームの中に浸透していました。先生からよく聞かされていた言葉があります。
「県大会で準優勝するのも、地区大会で一回戦敗退するのも同じである。負けたら私たちがやってきたことが間違っていたことになる。」と。今考えると、16~18歳の子どもたちにとっては重たい言葉だったかもしれません。しかし、当時の私たちはその言葉を当然のこととして毎日を過ごしていました。インターハイ予選が近づくにつれ、チーム内にはピリピリとした緊張感がただよい、練習の激しさも日に日に高まっていきました。
インターハイ予選の1カ月前。私には楽しみな時間がありました。練習終了時の先生の話です。私たちは静寂に包まれた体育館の中、横1列に整列してその話を聞きました。
「インターハイ予選は、独特の雰囲気と緊張感の中で行われる。突然、スーパーヒーローが現れるんだ。スーパーヒーローは、チームを一番高いところに導く」と。先生は、これまで歴代指導してきたチームで誕生した「スーパーヒーロー物語」を語ってくれました。20年経ちましたが、その話に心を動かされたことを鮮明に覚えています。

隣には、じっと話を聞く梅さんがいました。
いよいよ2001年インターハイ富山県大会が始まりました。私たちは1回戦から順当に勝ち進んでいきました。草切さんが相手DFを切り裂き、永井さんにパス。相手チームも永井さんを研究してきており、永井さんの3Pを封じに厳しくDFに来ます。永井さんはドライブシフトに切り換え、果敢に相手陣地にアタックします。こぼれたボールを蓮さんが拾い、そのままゴールにねじ込みました。ひと冬を越して大きく成長した3年生の住吉さんが1ON1で奮闘しました。私は、先輩方の姿を頼もしく、そして羨ましく応援席から眺めていました。
しかし、視線の先に広がるコート上をいくら探しても、梅さんの姿はありませんでした。
準決勝を終え、バスが学校に到着しました。3年生を中心とした主力メンバーは、明日の決勝戦に備え帰宅しました。私は、自主練のためそのまま体育館へ。同級生の金山とシュート練習をしながら「明日の決勝戦、ドキドキするな。絶対勝とうぜ」、と興奮気味に話をしたことを覚えています。
「お疲れ様でした!」
私たちは梅さんがシュート練習をする体育館をあとにしました。

つづく